回想法アルバム 若い頃の写真(記憶)に宿る力

現在の「写真」といえば「デジタル写真」を意味する時代となった。
私の青春時代(50年前)の写真というと・・・。

 写真機の裏蓋を開けてそうっとフィルムを装填する。蓋を閉め2~3回空(から)打ちをしてから枚数カウンターが0になっていることを確認する。そしておもむろにファインダーをのぞく。距離(ピント)と絞り(明るさ)を調整し、枠取りを決めてからシャッターを押す。24枚の写真を撮り終わると、クランクを引き出してクルクルとフィルムを巻き戻す。しっかり巻き戻ったことを確認してから裏蓋を開ける。巻き戻っていないとフィルムに光が当たってダメになってしまうからだ。写真機から取り出したフィルムを写真屋さんへ持参し現像を依頼する、3日後に印画紙に現像された写真が手に入る。ワクワクドキドキする瞬間。

 24枚現像すると、フィルム現像料600円、印画紙印画料1枚30円が24枚だから720円。合計1320円を払う。1枚1枚ていねいに見る。24枚のうち4枚くらいはピントがボケていて使いモノにはならない。

「チェッ!120円損した」と愚痴を口にする。

写真はこれほどに手間のかかるシロモノだった。だから大切にした。ガールフレンドといっしょに写った写真は宝物で、二人並んだ写真の景色をハサミで切り取り、二人だけが写った写真をノートに貼って大切にした。だから、50年以上前の写真は大切にされていた。

写真は認知症予防のトリッカーになる

 現在の写真は写真機ではなく「スマホ」で撮影。写真機さえあまりお目にかからない。「後でデリートすればいい」と思うと何枚でも撮る。動画も撮る。クラウド機能があれば、夜のうちに撮った写真をすべてオートでクラウド保存するので、クラウドには数万枚の写真データが保存されていることも珍しくない。そうなると、写した写真をじっくり見直すこともできない。ただただ写真の枚数が重なるだけ。だから、写真を撮ったその時に選択をして選抜された写真だけを特別にファイルしないと、写真は自らの多さで埋没して行く。そうした埋没から救うアシスト機能を持った写真ファイル用アプリも開発されている。

 写真は時代によってそのあり方が違ってきた。まだモノクロ写真の時代、写真は記念でもあり、思い出でもあり、心の形でもあった。この写真が認知症予防に役立つことが分かってきた。若い頃の記憶を維持していれば認知症の発症を遅らせることができる。その方法は、若い時代の想い出(記憶)をテーマにしてたくさんおしゃべりすること。写真は若い自分を想い出す大切なトリッカー(きっかけ)となる。
認知症が心配な高齢者にとって、若い頃の写真(記憶)には心晴れた明日をイメージさせる力が宿っている。

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日本回想療法学会
日本回想療法学会
回想療法は、2000年から普及されてきた最新の認知症予防・介護予防技術です。
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