緊急報告! 認知症基本法成立

「認知症基本法」が6月8日衆議院本会議で可決、14日に参議院で可決成立した。その内容について紹介する。この認知症基本法は、国、地方公共団体、国民に向けて認知症の人と家族への人権擁護とともに、国民がもっとも気にしている認知症とその予防(防止)に法的位置づけを示した。

認知症基本法(省略抜粋)

文責:小林

第1条 目的
急速な高齢化で認知症の人が増加している。認知症の人に対し、国・地方公共団体は適切な医療サービス、介護サービスを提供しなければならない。もって認知症の人が共生できる社会の実現を目的とする。

第2条 定義
認知症とは、アルツハイマー病、神経変性疾患、脳血管疾患、その他の疾患により認知機能が低下し生活に支障が出た状態。

第3条 基本理念
2 国民が認知症に関する正しい知識及び正しい理解を深めるようにする。
3 認知症の障壁を除去する。
6 認知機能障害に係る予防の成果を国民が享受できる環境を整備する。

第7条 公共交通事業者の責務  認知症の人に合理的配慮をする。

第8条 国民の責務
国民は認知症に関する正しい知識および正しい理解を深めるよう努めねばならない。

第9条 9月21日を認知症の日とする。

第14条 認知症の人に関する理解増進
地方公共団体は学校および社会教育において認知症に関する正しい知識と正しい理解を深める施策を講ずる

第20条 研究の推進
国、地方公共団体は、認知機能障害の予防、および研究成果の普及を講ずる。

第21条 認知症の予防
国及び地方公共団体は、認知機能障害の予防に取り組み、予防に関する啓発、知識の普及、地域活動を推進する。

認知症の定義について

 認知症という言葉が生まれたのは2004年。当時は内容がよく知られておらず多くの誤解や偏見が生まれた。日本では2004年に「痴呆症」から「認知症」に名称変更されたが、英語ではdementia (デメンチア)と変化はない。さらに、dementiaの語源はde(離れる)、mentia(精神)という意味で、精神から離れた行動をする、ということ。そうした意味では「生活(ADL)障害)」というラインが引かれたことで、不確かな認知症情報(フェイク情報)が整理される。

たとえば「昨日の夕食が思い出せないから認知症だ」といった誤解からは解放される。認知症基本法では明らかに認知症は病気であると明記しているので、今まで「医学的定義」しか示されていなかったが加えて「法律的定義」が出されたことの意義は大きい。

法的認知症

 一般的に認知症の最大要因は「老化・加齢」であることには間違いない。高齢になって認知機能が低下しても「ADL障害」が発生しない場合は、医学的認知症であっても、法的認知症ではない、とういうことになる。ちょっと不思議な感じだが、要するにADL障害を発生させなければ、法的認知症でないということだからADL記憶を維持することが直接的に認知症予防になることが法的に認められた。

認知症基本法の趣旨について

 すべての国民は認知症への正しい知識を持ち、正しい理解を深め偏見を持つことがないようにすることが国民の義務となった。認知症の正しい知識と正しい理解を得れば、結果的に自分自身の認知症を発現させないようにする意識が高まる。

国民に「認知症の正しい知識を持ち、正しく理解する」ということを求めているが、現実的に高齢者が自分だけで認知症の知識を持ち、理解を深めるのは難しい。だからどうしても行政(自治体)が主導して認知症に関する国民教育をしなければならない。つまり、高齢者だけでなくすべての国民に向けて認知症に関する正しい知識と正しい理解が得られるように地方自治体が教育環境を整備しなければならないということ。認知症の正しい知識を広めることが日本回想療法学会の法的位置づけにもなった。

ADL障害とADL 記憶

 日常生活行動はADLと呼ばれ、10歳~15歳くらいまでの記憶の中に含まれているので、この年代の記憶を失ってしまうとADLに関する記憶も消えるのでADL障害が発生する。第2条の定義にしたがえば、「ADL障害」の発生が法的認知症の条件になるからADL障害が発生しないようにADL記憶を維持させることがそのまま認知症予防となる。

取手市委託認知症予防事業の「回想法スクール」では、ADL記憶を維持する1H話法を多くの高齢者が学んでいる。認知症基本法によって国民が認知症に関して正しい知識と正しい理解を得る活動として法的に定められた地方公共団体事業となった。 

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日本回想療法学会
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