完成した「回想法アルバム」をどう使う?

 親のアルバムを整理して「残す写真」を作る。完成したアルバムの使い方について考えてみよう。デジタル写真世代にはアルバムは馴染みが薄いかもしれないが、アルバムは1ページごとにパッと視覚に入るのでテーマがイメージしやすく、テーマ性に優れている。さらに本としての機能もあり、複数人へのプレゼントにもなり、そんな「回想法アルバム」の活用方法について紹介する。

親の写真を子が整理し、施設入居や独居の親にプレゼントする。

二世代同居の家族構成は少なくなった。親は夫婦だけで暮らし、子どもとは離れていることが多く、夫婦のうちどちらかが亡くなり、独居となれば風邪を引いても一人で対処しなければならない。そんな親を見かねて親を自宅へ引き取ることもできない子は、親を老人施設へ入居させざるを得ない。そうせざるを得ない子にとって二世代同居とはまた違った親と子のあり方や親を思う気持ちが生まれる。離れているからこそ見えてくる親の愛とも言えるかもしれない。

親が子に残すモノには、お金・財産・のれん・地位・信用など数多くあるが、どれも親子関係という価値には直接関係しないような気がする。ひょっとすると親子が直接結ばれているのは「時間」。それもいっしょにすごした時間だと考えてみると、親が子に本当に残したいモノは「親の生きざま」かもしれない。お金や財産も大切なことには間違いないが、でもプラスして残したい(遺したい)モノを形にするとすれば、それが「アルバム」と言える。生きざまに関する写真であればそれが「回想法アルバム」となり、施設にいる親に会いに行くときアルバムを持って行き、それを見た時の親の笑顔が目に浮かぶ。

「回想法アルバム」を使って親に回想法を行い、記憶を維持・回復させる。

 若い頃の「記憶が消える」と認知症が発症することがわかっている。だから記憶が消えないようにアルバムを見せながら青春時代のことを親といっしょにおしゃべりする。子が生まれる前のことであれば子にとって初めて聞く内容も多く、ときには新鮮な話題が聞けるかもしれない。

本来であればアルバムがなくても子が親に聞いておくべきだった内容もあるが・・・。とは言え、親子が写った写真を見ながらのおしゃべりは楽しい。また、元気なときに「回想法アルバム」を作っておくと、後になって親が認知症を発症し、自分の記憶が薄れてしまったときには、その回想法アルバムを見せながら、「おかあさんは、○○小学校を卒業したのよ。学校ではかけっこがとっても速かった。運動会ではいつも一番だね」と語りかけて記憶を呼び戻すことができる。記憶が戻ってくれば認知症の症状が軽減する。

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日本回想療法学会
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